地域の本のつくり方


りんてつ

年度末のせいか新刊が続々と出来上がってきています。
この春の新刊は、県内の自治体やいろいろな団体との共同で刊行すするというパターンなのが特徴。
地域出版社の本づくりのかたちとして、これまでもそうだったが、今後ももっと増えていきそうな感じだ。


まず、倉敷商工会議所青年部との恊働で『りんてつ沿線手帖ーくらしきピーポー探偵団が行く』。
本書は1年以上前から準備を進め、先週末に完成。企画、取材、原稿、写真などすべて地元の高校生、大学生と青年部のメンバーが力を合わせて作り上げた労作。昨日の山陽新聞でも掲載されていたが、A5判100ページに、かかわった200人以上の熱いエネルギーが伝わってくる。

2冊は、日本建築家協会中国支部岡山地域会とのタイアップで、『おかやまと中国地方の建築家』刊行。ちょうど一年前から準備を進め、中国5県49人の建築家のみなさんを取材して、代表作を紹介し、建築に対する向き合い方を聞いた。
地域会の編集委員の方々とは、毎月ミーティングを重ねてきたが、振り返ればとても充実した時間だったように思う。

3冊目は、奈義町教育委員会が企画した『今も生きている巨人 伝説さんぶたろう』(民話さんぶたろう研究実行委員会・編、立石憲利・監修)。地域に伝わる伝説をいろんな角度から考察したもので、いろいろな話題を提供している奈義町の元気さ、底力を感じさせる本だ。
このほか、公益財団法人吉備路文学館との恊働で『吉備路文学館第26回少年少女の詩』を、今年から書店でも購入できるようなかたちで出版。『岡山の文学ー平成28年度文学選奨作品集』は、岡山県とおかやま県民文化祭実行委員会との連携で制作。
『地方にかえーる人 2』は、県北・津山市の「レプタイル」という企業と恊働して制作した。
ほかにも吉備中央町の民話集『岡山「へその町」の民話』は、昔ばなしを集大成したもの。少し遅れて4月半ばにはできる予定。
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表町から吉田書店がなくなった

先週の木曜日、倉敷ロータリークラブに招かれて、スピーチをさせてもらった。

タイトルは「本づくりはまちづくり〜地方企業と地域出版」
約70人の会員が出席。
本好きな会員の方が多いと聞いていたので、こんな質問をしてみた。

1カ月に何冊を本を買いますか?
1カ月に何冊本を読みますか?
最近本屋さんに行きましたか?
生活圏に身近な書店はありますか?

残念だが、本を読むのも買うのも、そして書店へ足を運ぶのも、思った以上に多くはなかった。

新聞の報道や業界紙によると、街から書店がどんどん少なくなって来ている。
身近なところでも、
表町に140年続いていた吉田書店が、先日9日をもって表町から姿を消した。
幼い頃、父親に初めて連れて行かれた書店が、表町の吉田書店だったことをよく覚えている。
表町のシンボルのような店だったので、ショッキングな出来事だ。
今後は、伊島町へ新たな店舗を構えて外商中心で営業するそうだ。

1992年には2万2000軒あった書店が、2014年には1万4000軒に減少した。
ただ、書店は大型化しているので、売り場面積は変わっていないとも。
また、コンビニ3万軒で買えるので、一概に本を読まなくなった、買わなくなったということではないが、出版業界のなかで、本屋さんと問屋(取次店)は激変している。

毎年秋に「岡山日販会」という、書店と出版社、そして取次店が一同に介する機会がある。
昨年もあり、そこで、推奨銘柄のコンテストが行われた。
そこで紹介された本は、実用書や自己啓発が多く、
出版社も書店も「売れる本」として、こんな本ばかりが注目を集めているのかと思うと、
なんとも言えない気分になってきた。
出版社も売れる本を、そして書店側も売れる本をという二つの円が交わったところが、
こういうジャンルの本だということなのだろう。
吉備人のような地方の小さな出版社が、そのことをどうこういう資格などないけれど、
「ちょっと違うんじゃないかな」と思ってしまった。
地方で数百部、多くても数千部の本をつくり売っているぼくたちには、こういう流れにはついていけない。

前々から思ってはいるが、
こうした東京中心の出版業界のメインストリームとは、一線を画したところでなければ、地方の出版社などは生きていけない。

地方は地方での本のつくり方、
出版社の成り立つ方法があるはずで、なんとかそれを見つけようとしている。

それは、東京の出版社ではできない、地域の人々に寄り添う本づくり。
本をつくりたい人に寄り添う——地域出版の使命だと思う




緑内障と眼鏡


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年に一度の健康診断を受けた。
この年齢だから、いろいろチェックは入るが、ここ数年、胃カメラもエコーも概ね切り抜けてきている。
今年もこれで大丈夫かなと思っていたら、思わぬところに落とし穴があった。
視力の低下だ。
眼鏡をかけても車の運転に必要な0・7が見えるか見えないか。検査をする人が、少しこまったように「これではどうですか?」といろいろ試してくれるのだが、見えたり見えなかったり。

ちゃんと見えない自覚症状もあったので、健康診断のあったその週末、眼鏡店に行って眼鏡をつくり直そうとしたところ、
その眼鏡店のオーナーから「度数を上げても視力が上がらない。一度眼下で診てもらっては。ひょっとすると白内障かも」と言われた。
週明けの月曜日、自宅すぐ近くの眼下で診断してもらったところ、「緑内障の初期ですね」とのこと。薬をもらって、進行を止めることになった。
白内障は手術を伴うので、それはそれでちょっと怖いが、緑内障は下手をすると視力をなくしてしまう。年齢が年齢だからそういう症状が出て来ても不思議ではないが、ショックはショックだ。
しかももらった緑内障の目薬は、目薬を入れて5分後には洗い流さなければならない。これがけっこう面倒。
眼下での診断結果をもって、先の眼鏡店に行き処方箋を見せる。眼鏡店のそのオーナーが眼科での診断を進めてくれたことに感謝し、今の状態に合った眼鏡をつくった。ちょっとまるっこいメタルの国産フレーム。レンズはNikonの遠中距離。
今日出来上がったその眼鏡を受け取りに奉還町の岡山眼鏡店へ行く。
かけてみるが、今まで使っていたものとそんなに変わった感じがしないように設定してくれっていた。
半日もかけていると、なじんできた。しかも遠くはよく見える。
今宵十六夜の月もくっきりと、きれいだ。
眼鏡を替えるだけで、なんだか別人になった気分。こうやってパソコンに向かっていても、特にストレスもない。
いずれにしても、視力の異常を見つけてくれた岡山眼鏡店の猪原さんには感謝だ。

取材力、編集力が試される社史づくりが好きだ

161026朝日社史原稿

一昨日(10月26日)付けの朝日新聞に「社史づくり未来の力に」という全ページの記事が掲載されていた。
朝日新聞の自分史サービスに「社史サービス」というものがあり、そのPRを兼ねた記事だが興味深いものだった。
その中で、神奈川県立川崎図書館が、1万8000点の社史、周年史を所蔵していて、「社史室」を設け一般公開しているという。
一般の人には縁のなさそうな社史をなぜ公開するのか。
「読み方次第ではいろいろな発見があります。(中略)実は地域の歴史を知るのにも役立つのです。また、テーマを設けていくつかの社史を横断的に見ると、ビジネスや防災対策などのヒントがえられます」(司書・高田高史さん)
まったく同感。

この数年、年に数冊ずつ社史編纂の仕事をいただけるようになった。
これまでに岡山ガス100周年記念史、下津井電鉄100周年記念史、瀬戸桜保育園90年史、カモ井加工紙87年史、丸五ゴム工業の60年史、ダイヤ工業50年史、備南工業50年史、おかやま工房30周年史、アルマ経営研究所30年史などにかかわってきた。
規模や業種はさまざまだが、企業の歴史の背景には、世界や日本、そして地域の歴史と密接にかかわっていると感じることが多々ある。
今年も6月から蜂谷工業の100周年史編纂をお手伝いしている。100年といえば、日本の総合建設業創世から戦後の急速な発展、バブル崩壊、リーマンショック後の低迷、そして再浮上の兆し……。とかく談合や政治との癒着など社会から叩かれることの多い業種だが、経営トップやOB社員の方、現場の一線で頑張っている所長さんらの話を聞いていると、地域づくりやインフラ整備に、真剣に向き合い、情熱を傾けていることがよくわかる。
しかも、社史には書きにくい話もたくさん出てきて、下手な小説よりもよほど面白い。

文献や資料探しからその読み込み、関係者やOBの方々への聞き取り、インタビュー、写真撮影……取材力、編集力の問われる仕事だけに、「社史」の仕事は面白く、楽しいことが多い。
そして、企業側の担当者の方々とは、長期間にわたって共に苦労するからか、気心の知れたいい関係になることができるそれもまた社史の仕事の魅力でもある。

力をもらえる言葉「もう一つの最前線」


このところ毎日取材に出ている。
取材を伴う本づくりが多いのだから、当然といえば当然。
話を聞いて、原稿にまとめ編集する。著者がいて、原稿を受け取り編集するというより2段階(取材・インタビュー/原稿執筆)作業が加わるので、必然的に本が出来上がるまでに時間がかかる。
が、取材(人の話を聞く)は楽しく、刺激になる。
先日もとてもいい話し、力をもらえる言葉を聞くことができた。

建築家、神家昭雄建築研究室の神家昭雄さんに話を伺ってきた。
主に住宅建築を中心に数多くの賞も取っているベテランだ。
古民家再生工房のメンバーのひとりで、日本の伝統的な住宅建築の手法や技術を生かした、細部まで美しい家をつくる。

その神家さんの言葉。
「妹島さんや西沢さんのようなアバンギャルドな最前線の建築に注目が集まるが、ぼくはもう一つの最前線があると思っている。それは、フツウの材料を使って、フツウの工法で、フツウを超える建物をつくること。これがもう一つの最前線で、ローカルで建築をしているぼくは、こちらの最前線を走っていきたいと思っている」
〈フツウ〉というとつまらないものというふうに聞こえるかもしれないが、とても大事なものだと神家さんは言う。

神家さんのその言葉を聞いて、「そうそう、ぼくもそうありたいと思っている」と心の中で頷いた。日本の出版業界ではまったくの「辺境」で本を作り続けている、ぼくたちの仕事は、世間ではほとんど注目を集めることはないかもしれないが、〈もう一つの最前線〉になり得るかもしれない。

ローカルで、ちゃんとローカルに在ることを自覚して仕事をしている人の話を聞くと、力をもらえる。
プロフィール

kibitopub

Author:kibitopub
山川隆之
編集者、吉備人出版代表。1955年岡山市生まれ(旧姓・長井)。岡山市立操南小学校—倉敷市立大高小学校から、倉敷市立南中学校・県立天城高校・三重大学農学部卒業。伊勢新聞記者、備北民報、生活情報紙「リビングおかやま」編集長を経て95年に株式会社吉備人を設立。『絵本のあるくらし』『おかやまの建築家』『のれん越しに笑顔がのぞく』『粘着の技術−カモ井加工紙の87年』『強く、やさしく、面白く』などの編集を担当し、吉備人出版としてこれまでに20年間で約500点を出版。日本出版学会会員、岡山ペンクラブ会員、NPO法人アートファーム理事。2012年に福武教育文化賞奨励賞、2013年に岡山市文化奨励賞(学術部門)を受賞。RSKラジオ「ごごラジviviっと!」ゲストパーソナリティー。著書に『岡山人じゃが』(共著)など。

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