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「地方」はそれだけでハンデキャップが

その2
●地方での出版社はそれだけでハンデキャップが

こうした環境の中で、「地方」で出版業をはじめようとすると、「地方」ということだけでいろいろと不都合なことがある。
その代表的なものが本の流通である。
読者が本を手にして、購入するのは書店。
最近ではネット書店がシェアをのばしてきているが、それでもまだリアル書店で本を買うという人が圧倒的に多い。
その書店に作った本を並べてもらうには、直接書店と交渉して置いてもらう(直扱い)にするか、取次店という問屋機構に納め、そこを経由して書店へという方法を取る。
日販、トーハンというのが2大取次店として知られている。

こうした取次店と口座を開く(本を取り扱ってもらう)ためには、年間に5、6冊は刊行するこれまでの実績か、きちんとした刊行計画が必要で、できたばかりの、しかも東京から遠く離れた地方の出版社では、すぐに口座開設などはしてもらえない。

出版点数も増え、年間10点以上刊行するようになって、東京の大手取次店に扱いをお願いしようと、一度東京の本社まで出向いたことがある。
担当窓口のイスでかなり待たされ、事務的にかなりぞんざいな扱いを受けた印象だけが残り、やはりうちのようなイナカ出版社など相手にしてくれないのだな(多分にひがみ根性が入っているが)と、がっかりして帰ったことがある。

それから数年後、また別の大手取次店の窓口に、今度は電話で口座開設の相談をしたのだが、「口座を開いてもそんなにたくさんの冊数を扱うことはできませんよ。搬入、返品はどうされますか? 小部数でもすぐ元払いで本を送ってもらえますか? 東京に倉庫ないですか?」
暗に「いやですよ」的な返事だった。

この時に、もう日販やトーハン、大阪屋といった大手の取次店に口座を開くのはやめよう。
あれは、東京に事務所、倉庫を持っている出版社のための取次店。
数の少ない地方の出版社には、機能そのものが合致していない--自分のなかでそんな結論に達した。

120728返品8箱
さっき届いた地方・小出版センターからの返品。8箱も…。
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プロフィール

kibitopub

Author:kibitopub
山川隆之
編集者、吉備人出版代表。1955年岡山市生まれ(旧姓・長井)。岡山市立操南小学校—倉敷市立大高小学校から、倉敷市立南中学校・県立天城高校・三重大学農学部卒業。伊勢新聞記者、備北民報、生活情報紙「リビングおかやま」編集長を経て95年に株式会社吉備人を設立。『絵本のあるくらし』『おかやまの建築家』『のれん越しに笑顔がのぞく』『粘着の技術−カモ井加工紙の87年』『強く、やさしく、面白く』などの編集を担当し、吉備人出版としてこれまでに27年間で約780点を出版。日本出版学会会員、デジタルアーカイブ学会会員、岡山ペンクラブ会員。2012年に福武教育文化賞奨励賞、2013年に岡山市文化奨励賞(学術部門)を受賞。RSKラジオ「ごごラジviviっと!」ゲストパーソナリティー。著書に『岡山人じゃが』(共著)など。

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