あの町並みに本屋さん兼小さな出版社があっても…勝山でみた夢

週末の土曜日(10月3日)、真庭市勝山で開かれた「勝山町並み体験クラフト市2015」に出かけた。
その一環で行われた「本とまち」プロジェクトのブックイベントで「本づくりはまちづくり」をテーマに勝山の人たちと話をしてきた。
かつては町の本屋さんがあった勝山も、本屋さんがなくなって、もうかなりの年数が経過した。真庭市内には久世にロードサイドの中規模店が一店舗あるが、勝山、そしてそこからさらに北へ上がる美甘、新庄、湯原、蒜山など周年に暮らす人たちにとっては、やはり地元に本屋さんがほしいという。
ぼくも今回勝山に来てみて、勝山クラスの規模のまちには、やはり書店が必要だと思う。
勝山のまちと本という関係でいえば、今回のイベントも真庭市の中央図書館を勝山にという願いを込めての取り組みだと聞いた。
この日のブックイベントでも、今の勝山町図書館の司書の方が、谷崎潤一郎についてのブックトークを聞かせてくれた。
文豪谷崎が戦争中、この勝山に疎開し、その期間に代表作「細雪」を書いたということもあり、地元では一つの観光資源にしようという取り組みもある。
ぼくはこのブックトークを聞きながら、ならば勝山に住む人たちと谷崎との接点を、町の人の視点から語ったり、記録したものがないのかなと思った。
谷崎を見た、話をしたという人は少なくなったかもしれないが、70年前のことだ。谷崎が滞在していた間のことを知る(または聞かされている)町民の方はいるはず。この勝山で文豪は何を食べ、どんな暮らしをし、町民たちはそれをどう見ていたのか。
司書の方の話のなかで、「勝山のまちが谷崎を守ったのではないか」とあった。そのことを、きちんと文字にして残す、まちの人たちの手でそれを本にする。
そんな本があれば、勝山の人たちのなかで、「谷崎潤一郎疎開のまち・勝山」が地域の財産になっていくのではないか。だから、勝山には本屋さんだけでなく、小さな出版社もあればいいなと、改めてそう感じた。
地域の記憶を残していくのは、地元の出版社の役割なのだから。
勝山のあの町並みの、民家をの軒先に本が並び、その奥で地元の本をコツコツ編集する人がいる。地元の人の歌集や随筆集をまとめたり、地域の団体や企業の記念誌を編集・制作したり……地元の本づくりを地元でまかなう、地域全体がその出版社を活用することで支えることができたら、地域にとっても大きな財産、力になるのではないだろうか。
そんな人が勝山に現れないかな、などど空想しながら、ススキのきれいなまちを後にした。

スポンサーサイト