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表町から吉田書店がなくなった

先週の木曜日、倉敷ロータリークラブに招かれて、スピーチをさせてもらった。

タイトルは「本づくりはまちづくり〜地方企業と地域出版」
約70人の会員が出席。
本好きな会員の方が多いと聞いていたので、こんな質問をしてみた。

1カ月に何冊を本を買いますか?
1カ月に何冊本を読みますか?
最近本屋さんに行きましたか?
生活圏に身近な書店はありますか?

残念だが、本を読むのも買うのも、そして書店へ足を運ぶのも、思った以上に多くはなかった。

新聞の報道や業界紙によると、街から書店がどんどん少なくなって来ている。
身近なところでも、
表町に140年続いていた吉田書店が、先日9日をもって表町から姿を消した。
幼い頃、父親に初めて連れて行かれた書店が、表町の吉田書店だったことをよく覚えている。
表町のシンボルのような店だったので、ショッキングな出来事だ。
今後は、伊島町へ新たな店舗を構えて外商中心で営業するそうだ。

1992年には2万2000軒あった書店が、2014年には1万4000軒に減少した。
ただ、書店は大型化しているので、売り場面積は変わっていないとも。
また、コンビニ3万軒で買えるので、一概に本を読まなくなった、買わなくなったということではないが、出版業界のなかで、本屋さんと問屋(取次店)は激変している。

毎年秋に「岡山日販会」という、書店と出版社、そして取次店が一同に介する機会がある。
昨年もあり、そこで、推奨銘柄のコンテストが行われた。
そこで紹介された本は、実用書や自己啓発が多く、
出版社も書店も「売れる本」として、こんな本ばかりが注目を集めているのかと思うと、
なんとも言えない気分になってきた。
出版社も売れる本を、そして書店側も売れる本をという二つの円が交わったところが、
こういうジャンルの本だということなのだろう。
吉備人のような地方の小さな出版社が、そのことをどうこういう資格などないけれど、
「ちょっと違うんじゃないかな」と思ってしまった。
地方で数百部、多くても数千部の本をつくり売っているぼくたちには、こういう流れにはついていけない。

前々から思ってはいるが、
こうした東京中心の出版業界のメインストリームとは、一線を画したところでなければ、地方の出版社などは生きていけない。

地方は地方での本のつくり方、
出版社の成り立つ方法があるはずで、なんとかそれを見つけようとしている。

それは、東京の出版社ではできない、地域の人々に寄り添う本づくり。
本をつくりたい人に寄り添う——地域出版の使命だと思う




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プロフィール

kibitopub

Author:kibitopub
山川隆之
編集者、吉備人出版代表。1955年岡山市生まれ(旧姓・長井)。岡山市立操南小学校—倉敷市立大高小学校から、倉敷市立南中学校・県立天城高校・三重大学農学部卒業。伊勢新聞記者、備北民報、生活情報紙「リビングおかやま」編集長を経て95年に株式会社吉備人を設立。『絵本のあるくらし』『おかやまの建築家』『のれん越しに笑顔がのぞく』『粘着の技術−カモ井加工紙の87年』『強く、やさしく、面白く』などの編集を担当し、吉備人出版としてこれまでに27年間で約780点を出版。日本出版学会会員、デジタルアーカイブ学会会員、岡山ペンクラブ会員。2012年に福武教育文化賞奨励賞、2013年に岡山市文化奨励賞(学術部門)を受賞。RSKラジオ「ごごラジviviっと!」ゲストパーソナリティー。著書に『岡山人じゃが』(共著)など。

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