発明家 磯崎眠亀 錦莞筵を彩る文様デザイン

錦莞筵は、なぜ海外で受けいられたのか。
その文様に焦点を当て、「ものづくり」における意匠・デザインの力を探る。
3月の新刊
発明家 磯崎眠亀 錦莞筵を彩る文様デザイン
明治初期、備後備中(現在の岡山県南部)の藺草、藺草製品の製造の衰退を見て、茶屋町の事業家・磯崎眠亀は高品質で雅な茣蓙(ござ)「錦莞莚(きんかんえん)」を織ることのできる織機を開発しました。しかし、豪華な錦莞莚は、国内では売れませんでした。
ところが、神戸の濱田篤三郎氏が海外での販売を始めたことから飛ぶように売れはじめ、貿易額の上位を占める製品となり、地域の藺草製品の隆盛を取り戻すことに成功したのです。錦莞筵はなぜ受けいれられたのか、その文様に焦点を当て、「ものづくり」における意匠・デザインの力を探ったのが本書です。
本書では、図版に描かれている文様を個々に調べ、それらの背景についてまとめています。そして、文様を12種類に大別し、4冊の錦莞莚の文様集に描かれている文様を全て分類しました。この分析結果から、磯崎眠亀は、明治初期に多くの文様を見るように努力したことがうかがえます。
磯崎眠亀の生家は、小倉織りをしており、小倉織りに文様を織り込む織機を開発しました。
また、錦莞莚のための文様を開発し、登録するために技師を置いていることが書かれていることからも、文様には重点を置いていたことがわかります。
特に海外への輸出品としての錦莞莚の特徴は、多様な文様であることと高い品質を保証することで、顧客の満足を得ていました。
この考え方は、現在でも「ものづくり」の基本概念であり、もし現在磯崎眠亀が製品開発と販売をしても、成功していると考えられます。
また、藺草の販売価格は低いが、製品として錦莞莚にすると高い価格で売れる、即ち付加価値を付けることから、藺草の生産、更に製品にする製造工程を備後備中の地域で行なうことで、地域経済への貢献は大きなものであったと、著者は考えます。
■書名:発明家 磯崎眠亀 錦莞筵を彩る文様デザイン
■著者:大﨑絋一(工学博士、岡山商科大学副学長)
■発行:吉備人出版
■仕様:B5判 並製本カバー付き オールカラー
■頁数:154頁
■定価:本体2750円+税
■ISBN:ISBN978-4-86069-524-8 C0060
■発行:2018年3月26日
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