FC2ブログ

2019年版吉備人出版図書目録

吉備人出版2019年版の図書目録ができました。

新書版152ページ。
1995年から2018年12月までに発行した約670点の本を紹介しています。
吉備人の歴史であり、当社のアーカイブです。
巻頭には、拙文「毎日『今朝の一冊』を書き続けてわかったこと」を書かせてもらいました。

既に手元に届いたという方も多いかもしれません。
もし、届いてなくて、欲しいなという方はぜひご連絡ください。
お送りします。

(図書目録巻頭原稿の転載)
IMG_1941.jpg
IMG_1939.jpg

毎日「今朝の一冊」を書き続けてわかったこと

2013年から公益財団みんなでつくる財団岡山が主催する「ソーシャルライター講座」の運営を手伝っている。ソーシャルライターとは、「社会の課題やのその解決のための取り組みを『じぶん目線』で発信する人」のことを指す。簡単にいえば、例えば地域再生や福祉、障害者の雇用といった社会課題の解決をめざして取り組んでいる人たちが、日々の活動に、ブログやYouTube、TwitterやFacebook、Instagramといったソーシャルネットワークサービス(SNS)を活用して、さまざま交流の促進、情報発信を図ろう、そしてそのためのスキルをアップしていこうというものだ。
講座では、インタビュー実践とライティング実践、相互添削と講師による添削指導を通じて、伝わり、響き、動かす文章が書ける「ソーシャルライター」を目指す。今年度で6回目だ。
昨年度のこの講座の実践編で、教室の受講者たちと一緒に倉敷で活動するNPOが運営するカフェを訪ねた。そのNPOのリーダーたちに話を聞き、原稿にまとめ、その原稿をSNSにアップしていこうというカリキュラムだ。
障害を持つ子どもを育てる親を支援しているそのNPOは、ホームページやブログだけでなく、Facebook、Instagramなどを駆使して、精力的に情報発信を行い、当事者(親たち)の居場所をつくり、耳を傾け、行政や地域を動かしている。
広報・情報発信を担っているNPOの代表者のAさんに話を伺いながら、日々の活動のなかにSNSを使った情報発信という作業が、あたり前のように組み込まれていることを実感した。
「よく、そんなにマメに原稿を書き、写真をアップできますね」と尋ねると、「動きのない、更新のない情報サイトは死んだものとみられるんじゃないかと。日々のちょっとしたことでもこうやって発信することで、動いている=生きていることを伝えられると思うのです」という返事が返ってきた。
確かに、このNPOの情報発信力は、身近に知っているいくつもの団体・NPOのなかでも、その情報発信頻度、バラエティーに富んだ内容は際立っている。そしてそれは、新聞、テレビなどマスメディアでの取り上げられ方や自治体からの依頼による協働作業など、活動の社会的な影響力に確実に結びついていた。講師役で参加しながら、模擬取材を通じて教えられることも多く、大きな刺激になった。

この講座での取材をきっかけに、自分自身も何かはじめようと、Facebookで「今朝の一冊」というタイトルの投稿を昨年(2018)11月から始めた。毎朝、棚から一冊の本を取り出し、写真を撮影し、簡単な文章を添えてアップする。文章量は約200文字から300文字。時間にして15分から20分だ。
紹介するのは、とりあえず自分の書棚にある本。例えば『すいません、ほぼ日の経営』とか箕輪厚介『死ぬこと以外かすり傷』など、奥付の発行日と同じタイミングで紹介している最新刊のものもあれば、小学校時代に読み、読書体験の原点ともなったケストナーや後藤竜二なども取り上げた。雑誌や図書館で借りた本の場合もあり、何を紹介するか、その選書理由は特に決めているわけではない。
「今朝の一冊」は、本の紹介だけでなく、その本を手にしたきっかけやその本にまつわる記憶や私事を書くこともある。2017年11月22日から一日も休まず書き続け、2018年の12月11日まで続いた。ただ、385回で一端お休みしている。
この間、何度かやめようかなとも思ったのだが、「紹介されたその本を読んでみます」とか、「私も大好きな作家です」などというコメントをもらった。1年間も続くと、不思議なくらい毎朝読んでくださる方がいて、休めなくなったというのが正直なところだ。「いいね」のサインはないのに、顔を合わせると、「いつも今朝の一冊を楽しみに読んでいるよ」と声をかけてくれる人が、何人もいたことにはびっくりした。
そういえば、あるノンフィクション作家の自分史の本を紹介したところ、「この著者は最近ヘイト本を書いているよ」を忠告されたことがある。自身の不勉強を恥じることもあったが、こうした反応も読んでくれる人がいるからで、読者の存在がとても励みになったことは間違いない。
このように、1年間、毎日書き続けたことで、いろんな出会いや発見があった。
学生時代の友人や若い仕事仲間、一冊の本を介していろんな人と交流で広がったのだ。と同時に、自分の書棚にある本一冊一冊が自分自身なのだなと、改めて感じた。
そして「今朝の一冊」を書きながら、「これは本の紹介という名の自分史、自伝なんだ」と思うようになった。いつごろ、何を読み、何に感動したのか。書棚にある本を手に取ると、そのときなぜこの本を手にしようとしたのか、そのとき何を考えていたのか――何らかの理由がそこにあった。その一冊を選んだこと、そのことが自分自身にとってとても大切なことだということがわかった。
小学校時代に手にしたケストナーやリンドグレーンといった海外の児童文学。堀江謙一『太平洋ひとりぼっち』を読んでから冒険ノンフィクションに心躍らせた中学校時代。高校時代は新潮文学全集でロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』など古今東西の古典をつまみ読んだ。大学時代は社会科学やサブカルチャーなど幅広くカバーし、新聞記者時代には斎藤茂男、本田勝一らノンフィクションの名作が仕事の手本となった。そして、出版をはじめた頃には、あんばいこう、森まゆみといった小さな出版社を興した先人たちの苦労話が参考になり、励みとなった。
生まれてきて、姉、兄がいたせいで、まだ文字が読めるか読めないかのうちから本は身近な存在だった。幸い、本さえ読んでいればあまり文句を言わなかった両親に育てられたこともあり、本だけは手元にどんどん増えていった。本棚を占領する本の背表紙を見ているだけで幸せな気分に浸ることができた。
もちろん目の前にある本を全部読んでいるわけではない。読んだ本が頭に入っているかといえば、そうでもない。ただ、今の自分がこうしてあるのは、こうした書棚にある本が、何らかのかたちで影響している。本の存在が血となり、肉となっているに違いない。ヒトをひとりの人間に育ててくれるもののひとつ、それが本ではないかと、今改めて思う。

この20年、本をめぐる環境は大きく変化した。「読者(活字)離れ」「出版不況」「本屋の危機」……出版と本を読む環境は、ため息の出るような文字ばかりが並ぶ。それでも人は本を手に取り、学ぼうとする。やすらぎを得ようとする、明日も頑張ろうという気になる。
一冊一冊の本が自分という人間を育ててくれたとすると、本をつくることを生業にしたことの責任と重さを感じないわけにはいかない。その一冊を編み、それを必要としている人へ届ける――このことを営みとし、喜びを感じるあいだは、もう一年頑張ってみようかなと思っている。
2019年、いろいろな変化が起きそうな1年になりそうです。ことし吉備人は創業から24年目に入ります。


スポンサーサイト



プロフィール

kibitopub

Author:kibitopub
山川隆之
編集者、吉備人出版代表。1955年岡山市生まれ(旧姓・長井)。岡山市立操南小学校—倉敷市立大高小学校から、倉敷市立南中学校・県立天城高校・三重大学農学部卒業。伊勢新聞記者、備北民報、生活情報紙「リビングおかやま」編集長を経て95年に株式会社吉備人を設立。『絵本のあるくらし』『おかやまの建築家』『のれん越しに笑顔がのぞく』『粘着の技術−カモ井加工紙の87年』『強く、やさしく、面白く』などの編集を担当し、吉備人出版としてこれまでに23年間で約630点を出版。日本出版学会会員、デジタルアーカイブ学会会員、岡山ペンクラブ会員。2012年に福武教育文化賞奨励賞、2013年に岡山市文化奨励賞(学術部門)を受賞。RSKラジオ「ごごラジviviっと!」ゲストパーソナリティー。著書に『岡山人じゃが』(共著)など。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR