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海渡失踪事件

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お盆の準備を兼ねて、大佐の家に帰っていた。
3時ごろから激しい雷雨。
雷の嫌いな(というか怖くて仕方ない)海渡は、家の中を右往左往。
ダラダラとよだれを垂れ流し、恐怖におののいている。
落ち着けと、海渡部屋(かつて応接室だった玄関ヨコの洋室は一応書斎になっていて、海渡の部屋にもなっている)にあるクレート(小屋)の中に入れておいた。
4時ごろには雷も止み、もう大丈夫だろうと、5時過ぎにはクレートから出して、いつものようにフリーにしてやった。
フリーにしていても、家の周辺をウロウロするか、玄関や通路の涼しい場所を探して横になっているので、特に心配したことはない。
しばらくして、「海渡がいない」と妻から声がかかった。
ちょうと草刈りをしていたので、ケリがつくところまでやって、捜せばいいかとしばらく草刈りを続けていたのだが、
「どこにもいない」と心配そうな声なので、刈った草をそのままに、捜すことにした。

いつも散歩コースや近くのグラウンド、田んぼや畑、いそうなところを歩いてみたが、どこにもいない。気配もない。
近くいるのなら、車のエンジンで飛んで帰ってくるだろうと思い、エンジンをかけてみたが、それでも出てこない。
遠くへいったのだろうか。
ちょっと心配になってくる。
パニクって家を飛び出し、道に迷ったのだろうか。
どこか、近所の庭先でうずくまっているのかもしれない。
いつも行き帰りを走る道を探して岡山の家にでも帰ろうとしているのじゃないか。
大佐のサービスエリアや新見に向かう県道を7、8キロ走ってみた。
犬一匹ウロウロしていない。
日が暮れ、田舎の夜の闇がだんだん深くなってくる。
新見警察署に電話し、一応届けをする。
電話に出た警察官が思った以上に親切だったので、少し気持ちが救われた。

10時を回り、家の裏の山のほうから鳴き声が聞こえるというので、行ってみる。
「海渡〜」と呼ぶ妻の声に、どうやら猿が反応しているみたい。
暗闇の向こうから「ギギっ」と声がする。
あきらめて、自宅に戻る。
母が用意してくれた晩ご飯を食べる。
午後から窓ふき、草刈り、海渡の捜索とずっと動いているのに、おなかは全然空かないのが不思議だ。

でも、食いしん坊の海渡は、おなかが減っているだろうな。
もし道に迷っているとしても、夜は動かないだろう。
その日に岡山へ帰る予定を変更し、大佐の家に泊まることにした。
このままは帰れない。
明日、朝一番でもう一度近所を探してみることにして、寝る。

6時に目が覚め、起きると妻はもう着替えをしていた。
夜中に何度も起きて、あまり眠っていないようだ。

玄関前を横切ろうとした時、玄関の引き戸の外から
「ワンっ」と声がする。
「海渡だ!」
妻と顔を見合わせ、すぐ玄関へ下り、
鍵をあけてみる。
扉から2、3メートルさがったところに海渡がいた。

「海渡!」名前を呼んでやると、ちょっと間をおいてこちらにすごすごと歩いてきた。
怒られるとでも思ったのだろうか。喜んで跳んでやって来るという感じではなかった。
抱きかかえて、なでてやる。
ケガもしていないし、そんなに汚れてもいない。
妻は半泣きで、抱いている。

そんな二人を迷惑そうに、すぐ脇にあるおやつのほうへ鼻先をもっていく。
おなかは相当空いていたのだろう。エゾシカジャーキーにむしゃぶりついていた。

一昼夜、どこにいたのか。何をしていたのか。しゃべってくれないので、わからない。
まあ、とにかく、無事帰ってくれてよかった。



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プロフィール

kibitopub

Author:kibitopub
山川隆之
編集者、吉備人出版代表。1955年岡山市生まれ(旧姓・長井)。岡山市立操南小学校—倉敷市立大高小学校から、倉敷市立南中学校・県立天城高校・三重大学農学部卒業。伊勢新聞記者、備北民報、生活情報紙「リビングおかやま」編集長を経て95年に株式会社吉備人を設立。『絵本のあるくらし』『おかやまの建築家』『のれん越しに笑顔がのぞく』『粘着の技術−カモ井加工紙の87年』『強く、やさしく、面白く』などの編集を担当し、吉備人出版としてこれまでに23年間で約630点を出版。日本出版学会会員、デジタルアーカイブ学会会員、岡山ペンクラブ会員。2012年に福武教育文化賞奨励賞、2013年に岡山市文化奨励賞(学術部門)を受賞。RSKラジオ「ごごラジviviっと!」ゲストパーソナリティー。著書に『岡山人じゃが』(共著)など。

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