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古文書の世界へ

新刊『玄々斎随筆-墨匠・松井元泰の遺書-』(竹林榮一編)。
昨日ラジオで本書を紹介するにあたり、読んでみたが(担当が違うのでゲラをちょっと見た程度だった)、すごい本だということを改めて認識しました。

A4サイズ、上製本、102ページの、とても上品な本です。
タイトルの「玄々斎随筆」という筆で書かれた文字、書道をしている方でないと読めません。
サブタイトルは「――墨匠・松井元泰の遺書-」とあります。
江戸時代の墨職人、習字に使うあの墨、墨を作る職人さんが残した文章です。
中をみてみると、筆で書かれた玄々斉さんの文書の写真です。
あまりに美しい文字過ぎて、読めません。
ですから、古文書に強い著者の竹林榮一さんと古文書を楽しむ会のメンバーのみなさんが翻刻してくださった文章「読み下し文」が、その下に書かれています。
つまり原文の古文書は読めなくても、大丈夫です。

で、どういう内容かというと、江戸時代の半ば、日本の墨づくりを飛躍的に発展させた墨職人というのが、この人・松井元泰(まつい・げんたい)という人で「玄々斉(げんげんさい)というのは号、1689年~1743年に生きた人です。
現在も続いている奈良墨の老舗・古梅園の6代目当主だった人です。
当時では生産が廃れて、中国製に頼っていた「松煙墨(しょうえんぼく)の復興や、わが国では初めてとされる墨の図録『古梅園墨譜』の編者として知られた方だそうです。

この随筆は、もと岡山県立博物館の副館長だった竹林榮一さんが、インターネットのオークションで見つけて入手。
竹林さんが代表を務める「古文書を楽しむ会」おメンバー10人と解読に取り組んだというわけです。

内容は、98ページ、780行にわたって、子孫への戒めや墨の歴史、墨づくりの歩みなどが書かれています。
例えば、松煙墨の復興では、熊野の樹齢千年の松を燃やし、煤を取り、膠を精選し、墨を作り、それば古梅園発展の基礎となったとか、中国の高い技術を学ぶために、長崎へ出向いて中国人から教えを乞うたとかのエピソードが。

なかでも、将軍吉宗に献上されて江戸で死んだベトナムの象の皮が、死後1カ月もたたない打ちに古梅園に渡され、それを膠として墨をつくり「香象墨」として幕府に献上されたという。
しかし、その元泰は、その墨の完成をみることなく死去したという。


古文書を読めると、こんなドラチックな話を読めるんですね。
ちなみに本書の帯には、あの磯田道史氏が手書きの筆文字で「これほど興奮する一次資料はない」という一文を寄せています。

これだけでも価値があるかも。
古文書なんて……を思う人も、ぜひ手に取って、その世界を垣間見てはいかがでしょうか?

玄々斉随筆
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プロフィール

kibitopub

Author:kibitopub
山川隆之
編集者、吉備人出版代表。1955年岡山市生まれ(旧姓・長井)。岡山市立操南小学校—倉敷市立大高小学校から、倉敷市立南中学校・県立天城高校・三重大学農学部卒業。伊勢新聞記者、備北民報、生活情報紙「リビングおかやま」編集長を経て95年に株式会社吉備人を設立。『絵本のあるくらし』『おかやまの建築家』『のれん越しに笑顔がのぞく』『粘着の技術−カモ井加工紙の87年』『強く、やさしく、面白く』などの編集を担当し、吉備人出版としてこれまでに23年間で約630点を出版。日本出版学会会員、デジタルアーカイブ学会会員、岡山ペンクラブ会員。2012年に福武教育文化賞奨励賞、2013年に岡山市文化奨励賞(学術部門)を受賞。RSKラジオ「ごごラジviviっと!」ゲストパーソナリティー。著書に『岡山人じゃが』(共著)など。

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